みなさまご存知でしょうか。2025年、雇用・労働からAIや省エネまで、幅広い分野で法改正が進みました。私たちの働き方にも関係の深い内容が多く含まれています。2025年もあとおよそ2ヶ月・・・!というこの機会に、今年施行された主な法律を振り返ってみましょう。

2025年に改正・施行された主な法律

改正・施行された私たちの働き方に関わる主な法律

2025年に改正・施行された私たちの働き方に関わる主な法律は以下のとおりです。

  • 女性活躍推進法改正
  • 高年齢者雇用安定法改正
  • 育児・介護休業法の改正
  • 障がい者雇用促進法改正
  • 建設業法改正(2025年段階的施行)
  • 建築基準法・建築物省エネ法改正
  • 労働安全衛生法改正
  • AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)公布
  • 電波法改正(高周波数帯オークション制度)

どんな改正・施行があった?

女性活躍推進法改正

  • 従業員数101人以上の企業は、「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務
  • 女性の健康上の特性に配慮すべき旨の明確化
  • プラチナえるぼしの認定要件にセクハラ防止措置の公表を追加
  • 特定事業主行動計画に関する手続きの効率化

高年齢者雇用安定法改正

  • 希望者全員を対象とした継続雇用を企業に義務付け
  • 高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備

育児・介護休業法改正

  • 子の看護休暇(旧・子の看護休暇)の対象を小学校3年修了まで拡大
  • 所定外労働の免除対象を小学校就学前まで拡大
  • 育児・介護と両立できる柔軟な働き方(テレワークなど)の導入を努力義務化
  • 育児休業取得状況の公表義務適用拡大(従業員数300人超の企業)

障がい者雇用促進法改正

  • 障害者の法定雇用率を段階的に引き上げ・除外率の引き下げ
  • 障害者雇用のための事業主支援を強化

建設業法改正(2025年段階的施行)

  • 処遇改善
  • 資材価格高騰による労務費のしわ寄せ防止
  • 働き方改革と生産性向上
    請負人による工期ダンピングの禁止
    現場技術者の専任義務の合理化・ICTを活用した効率化

建築基準法・建築物省エネ法改正

  • 新築建物で省エネ基準適合が義務化
  • 木造戸建て住宅の建築確認手続きが見直し
  • 木造戸建て住宅の壁量計算等の見直し

説明資料はこちら

労働安全衛生法改正

  • 「当該作業場で何らかの作業に従事する全ての者」に対して、以下の保護措置を実施することが義務付け
  • 一人親方や外部委託者への周知義務化

2025年は「現場の安全措置」対応が最優先に施行され、2026年は「体制・システム整備」対応が鍵

AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)公布

  • AI基本計画の策定やAI戦略本部の新設・人材育成・教育の促進などAI推進のための施行
    業務効率化やオフィス運営におけるAI活用の指針
  • 調査研究とリスク対応ー政府が国内外のAI技術動向や利用実態を調査・研究し、不正・不適切なAI利用による被害事例について分析・対策検討を行うことを規定

電波法改正(高周波数帯オークション制度)

  • 高周波数帯の利用に関する事業者オークション制度を導入

働き方改革の“次の段階”?

2025年の法改正の中で、私たちの働き方に最も影響を与えるのは、やはり人に関わる法律です。
女性活躍推進法改正や、高年齢者雇用安定法改正は、職場での多様性と柔軟性をさらに重視する流れを象徴しています。

女性活躍推進法改正により、101人以上の企業も「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務となりました。
単に数字を達成するための計画ではなく、誰もが自分の力を発揮できる職場環境の整備が求められています。具体的には、昇進ルートや評価基準の透明化、育児・介護との両立支援、フェムテック製品の活用など、実務に即した制度整備が必要です。

一方、高年齢者雇用安定法改正では、希望者全員を対象とした継続雇用を義務化。
定年を過ぎても働き続けたい人が安心して職場に残れる環境を整えることが、企業の責務となりました。年齢の異なる社員が共に働く職場では、視認性や音環境、座席配置など、オフィスデザインにも工夫が求められます。

さらに育児・介護休業法改正は、フレキシブルな働き方を制度として後押ししています。
小学校就学前までの子育て中社員に対する残業免除、テレワーク導入の努力義務化など、法律が企業に“働きやすさ”の設計を促しています。これにより、オフィスレイアウトではリモート会議ブースやフリーアドレス席、休憩スペースの設計がより重要になります。

建設・空間づくりの現場に広がる法改正

建築やオフィス環境に直接関わる改正として注目すべき法律は、建設業法改正建築基準法・建築物省エネ法改正です。

建設業法の改正では、原価割れ契約や過酷な労務条件の防止が義務化されました。
短納期・低価格で受注するのではなく、人が無理なく働ける契約と工期を前提に設計・施工を進めることが求められます。これにより、建築現場だけでなく、オフィスの設計や運営にも「働く人を守る」視点が反映されることになりました。

建築基準法・建築物省エネ法の改正では、省エネ基準適合義務が新築・増改築建築物に拡大されました。オフィス設計段階でも、断熱性・空調効率・換気設備・照明など、施工前に確認申請を行わなければなりません。
この改正は単なる省エネ対策に留まらず、快適で健康的なオフィス環境を作る契機になるとも言えます。

テクノロジーと共に変わるオフィス

2025年公布のAI新法は、まだ義務規定は少ないものの、業務効率化やオフィス運営にAIを導入する際の指針として注目されています。

照明や空調を自動調整する環境制御、フリーアドレス席の最適化、会議室利用の最適化など、スマートオフィス設計の法的枠組みとしても今後影響を及ぼす可能性があるのではないでしょうか。

また、電波法改正(高周波数帯オークション制度)は、IoTや無線LAN、通信インフラ設計に関わる技術的・法的影響も出てくると考えられ、将来的には、ワイヤレス機器やデジタルサイネージなどのオフィス設備計画にも関係してくる分野でもあります。

法改正から考える「これからの職場づくり」

2025年の法改正に共通するのは、「人を中心に据えた働き方」を重視する方向性です。

  • 多様な性別・年齢・障がいの有無を問わない職場
  • 健康と安全を守る建築・空間設計
  • テクノロジーを人の補助として活かす柔軟なオフィス

こうした取り組みは単なる制度遵守ではなく、社員が自分らしく働き、力を発揮できる組織文化の醸成につながっていきます。ユニバーサルデザインやウェルビーイング空間、休憩・相談室、フレキシブルな席配置など、法律改正の流れも受け「必然的な工夫」として取組みやすくなってきているとも言えるのではないでしょうか。

さいごに

今年は、私たちの働き方にも影響を与える法律の改正が進みました。少し早いですが、2025年を振り返り、端的にまとめてみました。
法律は、社会がどの方向に進もうとしているのかを示す羅針盤です。今年は特に、働く人の尊厳や健康を守り、多様性を尊重する職場を後押しするものが多くありました。これは、オフィス設計や空間づくり、働き方改革の実践にも直結します。

法律をきっかけに職場を見直すことは、社員一人ひとりの働きやすさや幸福度を高める大きなチャンスです。どこからはじめるか、どんな風に進めるか――考えるだけでも前向きな一歩となります。
私たちは「未来を変えよう、人と空間のチカラで」というパーパスのもと、働く人に寄り添ったオフィスづくりや働き方のご提案を行っています。まずは、そんな一歩から。あなたの職場にも、少しずつ変化を起こしてみませんか。