「体調が悪そうだけど、声をかけていいのだろうか」
「本人は何も言わないけれど、無理をしているかもしれない」
そんなふうに悩んだことはありませんか?
職場には、周囲からは見えない不調や痛みを抱えながら働く人がいます。
今回は、弊社が実施した「見えない痛みと、はたらく。」ワークショップを通じて、社員同士の関わり方や、誰もが働きやすい環境づくりとは何かを考えてみました。
目次
職場にある「見えない痛み」という課題
働く中で感じる不調には、周囲から見えやすいものと、見えにくいものがあります。
例えば、発熱やケガであれば周囲も状況を把握しやすく、休む・治療するという判断もしやすいかもしれません。
一方で、
- 頭痛
- 腰痛
- 疲労感
- 睡眠不足
- メンタル面の不調
- 月経に伴う症状
などは、本人にとって大きな負担であっても、周囲からは気づきにくいことがあります。また、同じ症状であっても、感じ方や仕事への影響は人によって異なったりします。
たとえ同じ人でも、睡眠や疲労、ストレスなどによって毎日のコンディションは変化していくことを考えると、
「いつも通り仕事をしているから大丈夫」
「元気そうに見えるから問題ない」
とは限らないのではないか?
そう一度、立ち止まって考えてみること。
相手の状態をわたしたちが勝手に判断せず、「身体には変化がある」という前提をお互いに持っておくこと。そんな意識が必要になってきます。
「分かる」だけではなく、「体験して考える」ワークショップ
健康や働き方について考えるとき、まず必要になるのは身体に対する「正しい知識」です。
ですが、知識として理解していても、不調を抱えた状態がどのようなものなのかを想像することは簡単ではありません。
そこで弊社では、社員自身が体験を通じて考える機会として、全社員向けワークショップ
「見えない痛みと、はたらく。」
を実施しました。

今回のテーマは、生理痛体験を入口に、身体の変化や個人差、そして働き方について考えること。
ただし、
このワークショップの目的を「生理痛を理解すること」とはしませんでした。
月経に限らず、女性に限らず、「人」の身体やコンディションには波がある、ということを認識した上で、その変化を特別なものとして扱うのではなく、誰にでも起こり得るものとして考えること。そして、不調を抱えた時に「我慢する」以外の選択肢を持てる職場について考えること、をこの取り組みの目的としました。
痛みを「耐える」ではなく、「影響を考える」
生理痛体験にはEMS機器を使用しました。
ですが実際の月経に伴う不調は、痛みだけではありません。だるさ、眠気、頭痛、集中しにくさ、気分の変化など、複数の症状が重なる場合もあります。今回の体験は、そのすべてを再現するものではありません。
このためこの体験は、実際の生理痛を再現したり、痛みに対する強さを判断したりするものではなく、
「感じ方の違いを知る」
ことができるものとしてワークショップを組み立てていきました。
参加者は刺激を体験しながら、計算問題やメール確認など、仕事を想定した課題にも取り組みました。


体験しながらわたしたちが体感として重要視するポイントは、「痛みに耐えられるか」ではなく、「普段ならできていることが、身体的な負荷がある状態ではどう変化するのか」ということです。
「少し条件が変わるだけで、仕事への向き合い方や感じ方が変わる」という気づきは、見えない負担を想像するきっかけになりました。
体験から生まれた、社員一人ひとりの気づき
ワークショップ後、参加社員へアンケートを実施しました。
その結果、
「自分の健康・働き方を考えるうえで役立つ」
という項目では、回答者全員が肯定。
また、
「見た目だけで判断しないことが大切」
「本人の希望を確認してみたい」という項目でも、多くの社員が肯定的な回答をしました。


自由記述では、
「痛みの感じ方は本当に人それぞれなことを実感した」
「会社を休む基準が人それぞれだった。自分の基準や考えを押し付けないようにしたい」
「さりげない声かけ、コミュニケーションの取り方を意識したい」
といった声がありました。
一方で、
「自分から相談・業務調整をお願いできそう」という項目は71%。
周囲への理解や声かけへの意識と比べると、少し低い結果でした。
ここから見えてきたのは、
「困っている人がいたら支えたい」
という気持ちはある一方で、
「自分自身が困った時に相談する」
ことには、まだ心理的な壁があるということでした。
働きやすい職場とは?
「察する」ではなく「確認できる」環境
このワークショップから考えると、働きやすい職場とはどんな職場と言えるのでしょうか?
「誰かに寄り添う」ことを考えた時、もしかすると「相手のことを察する力」が大切だと思うかもしれません。
しかし、人の痛みや不調は一人ひとり異なり、その「察する」さえズレている可能性があります。
だからこそ必要なのは、「察すること」ではなく、「確認できること」。
例えば、
「生理なの?」
と原因を決めつけるのではなく、
「いつもより少し辛そうに見えるけど、大丈夫?」
と事実から声をかけてみる。
また、
「休んだ方がいいよ」
と判断するのではなく、
「何か調整したいことある?」
と本人の希望や今必要なことは何かを確認してみる。
大切なのは、詳しい症状を聞き出すことではなく、
その人が今、どう働きたいのか。
どんな選択肢があれば働き続けられるのか。
そこを一緒に考えることこそが、働きやすい環境へとつながっていることが分かりました。
誰もが安心して働ける環境をつくるために
今回のワークショップでは、社員から職場に増やしたいこととして、
- 上司以外にも相談できる環境
- 相談しやすいルールや雰囲気づくり
- 本人の希望を確認したサポート
- 柔軟な働き方や休み方
など、多くの意見が出ました。
また、アンケートでも「体調について相談しやすい雰囲気」が最も多く選ばれました。
働きやすい職場環境とは、特定の誰かだけに優しい環境ではありません。
誰もが体調の変化や不調を経験する可能性があることを前提に、必要な時に相談でき、自分に合った選択肢を持てる環境です。
制度があるだけではなく、
社風・文化としての醸成のために
「相談してもいい」
「調整してもいい」
「自分の状態を伝えてもいい」
と思える文化があってこそ、制度や仕組みは活きていきます。
おわりにー社風はこれからもつくっていくものー
今回のワークショップをきっかけに、私たちもまだまだ考えていきたいと感じました。
「分かる」ことですべてを解決することはできなくても、
知ることで見え方が変わる。
体験することで、誰かの立場を少し想像できるようになる。
そんな一人ひとりの小さな気づきが、やがて職場の文化をつくっていくのではないでしょうか。
「大丈夫です」
そう言ってしまう言葉の裏側にあるものにも目を向けながら、誰もが自分らしく働ける職場を、これからも社員みんなでつくっていきたいと思います。